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2015年03月12日

夢は儚い


僕の住んでた街の花屋さんで、
おかあさんにあげる花を選んでてさ。
偶然、おかあさんの名前のついた
花があって、これしかないねって。
買ったよね。

寒かったけど、舞は、僕のポケットに
手を入れて、屈託のない笑顔だ。

僕は舞の笑い顔が大好きだ。
舞は僕のポケットに手を入れてれば
何か汚いものを触ったんじゃないかって
手を洗わなきゃっていう強迫症状が
でないんだ。

『今、手入れたままだったよね?』
『うん』

これだけで済むんだ。
きっと理解されないだろう。
舞は、不可解な動作を繰り返し
その場から動けなくなる。
泣きそうな顔で、強迫行為を
繰り返している。

強迫神経症の人間は、それぞれ
なんらかの形の強迫観念を持つ。
それをやめられないのだ。

今はそれほどではないけれど、
大学の頃は、僕は、家を出てから
不安になる。
ガスは止めたか。
玄関の鍵は閉めたか。

学校にいかなきゃなのに、
どう考えても、問題ないと
わかってても、家に、確認に
戻る。
そして、学校に向かい、
また、戻る。
出るときは、手帳に書く。
それもダメ。

その時は、僕は強迫神経症に
気づいていなかったんだ。

舞の症状。
手を洗いつづける。
鍋に水を入れて、温める。
舞は、
『今、洗剤、入れてないよね?』
と聴く。
そして、お湯を沸かし直す。
僕が、観ていなければ、
ずっと、お湯はできない。

舞。
その時、僕は、洗剤を入れて、
お湯をわかせてみたよね。
ほら、違うだろうって。

舞。
君の支えになりたかった。
ずっと。

舞は、正直だ。
嘘をつけない。
世の中には、不条理がいっぱい。
嘘がいっぱいだ。

僕等はいずれ2人で住む家を
探したよね。
おかあさんにも観てもらって。
子供のこと考えたら、おかあさんの
ところに近い方がいいねって。

家探し。。。
おとうさんがこう言ったからだよ。
『俺は、おまえらと住む気は
ねぇからな』

独り娘なのに。
隣の駅にしようってね。
舞は、その駅の近くの花屋さんで
働きたいって言ってたよ。
夢は儚い。
でも、僕等は夢を観た。

今日さ、舞の写真が出てきたんだ。
2002年の世界を切り取って
飾ってある。



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